地味なマルチコアアルゴリズム
マスコミ報道によると、Intelは従業員総数の1割に当たる1万人ほどを整理するといわれます。米国ではよくあることとはいえ、Wintel陣営の一角が経営に苦しんでいます。同社が次に打ち出す経営・営業上の戦略はどのようなものになるのでしょうか。
アルゴリズム、というが言葉あります。邦訳すれば、"解法"などになるでしょう。筆者は現在Herb Sutter氏のこの論文を同氏の許可を受けて訳出しています。詳細は次回から公開される訳文をご覧いたくことにし、マルチコアを前提にソフトウェアを開発する場合、従来のアルゴリズムの開発工程と異なる発想が要求されるようです。Intelは、このようなライブラリを出荷しています。このビジネスモデルは、マルチコア対応アルゴリズムとデータ構造をライブラリ化し、それをパッケージ製品として売り出す、ものです。きわめて地味な商売ですが、「技術を売る」、あるいは、「アイデアを売る」、という開発者や技術者の取るべき一つの方向性を示してくれています。
アルゴリズムとデータ構造を売る地味な商売。上流設計やモデリングなどの今日的な派手な流れと比較すると、「アルゴリズムを売る」ことは確かに地味な商売です。ところが、筆者は最近、アルゴリズムやデータ構造をはじめとする地味な部分が脚光を浴びようとしている印象を強く受けます。たとえば、前回紹介したAlan Kay氏は、現代の技術シーンを次のように描画しています。
"現代の開発者は先哲の業績を振り返らないばかりか、将来を予測しようともしない。彼らは日々刹那的な結論を出し続けている"
改めてこのKay氏の発言に耳を澄ましてみると、"なるほど"と頷く自分がいます。さらにいえば、Herb Sutter氏もソフトウェアの歴史を振り返りながら、ここでKay氏とまったく同じことを述べています。
Alan Kay氏とSutter氏の指摘。C++設計者のBjarne Stroustrup氏は、次期C++仕様の改善作業について問われ、"システムプログラミング機能とライブラリ作成機能の重視"を唱えています(参考_1、参考_2)。これら2つの回答はきわめて地味な響きを持っています。ご承知のように、Stroustrup氏は、時代の流れがオブジェクト指向へ向かう中で、(技術進歩の衰退を招きかねない)オブジェクト指向への盲従に警告を発してきた一人です(参照)。
筆者は昨年、このような本の出版に携わりました。著者の一人であるRussinovich氏は、Windowsカーネルを徹底研究していた人です。筆者は、たいへん幸運なことに、同氏と何度かメールを交換する機会を得ました。地味な人です。その地味な人は今、Microsoftの"Technical Fellow"に就任し、Windowsの生みの親であるDavid Cutler氏とともに、同社の将来の舵を取ります(Microsoft発表記事)。
筆者は、これら実力者の発言を吟味しながら、"IT業界はついに行き詰ったな!"、と感じないわけにいきません。独自のアルゴリズムとデータ構造を静かに考え出す開発者。現代のIT業界は彼らの業績を必要としています。次回からはHerb Sutter氏のマルチコア関連記事の翻訳文を紹介していきます。段落単位で公開していきますから、お気軽にお読みください。
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